Belsize Park(ベルサイズ・パーク)

ロンドンでの学生時代に下宿していたのはハムステッドというエリアです。ちょうど真北には、有名なハムステッド・ヒース(Hampstead Heath)があり、自転車で10分程南に行けば、これまた有名なカムデンタウン(Camden Town)があります。大学までは自転車で30分弱でした。

しかし、雨の日は自転車通学が大変なので、主にバス24番か地下鉄(Tube)のNorthern Line を使ったものです。最寄りのバス停は Southend Green という国鉄の Hampstead駅 の向かいにあり、映画やドラマでもたびたび登場する起点停留所です。このバス停から徒歩5分ほどの距離にあるのが、Belsize Park駅 で、今回のお話となります。


はじめて Belsize Park と聞いた時には、もちろんベル(bell)のような小さな公園があるものだと思っていました。 しかし、下宿の大家さんに聞いてみると、Belsize Park とは Park といっても公園があるのではなく、公園に適した緑地(Parkland)という意味だと、そして Belsize はフランス語の bel assis 「好立地・恵まれた土地」からつけられたのだよ、と教わったのです。


いずれにせよ緑の豊かな場所であり、閑で落ち着きのある場所です。ですから、自室で勉強をするにはモッテコイの場所、まさに bel assis だったのです。ちなみにかの有名な思想家・経済学者である Karl Marx(1818 – 1883)も一時期このエリアに居を構えていたこともあったとのことです。

ボリスバス(二階建てバス)

2020年現在のイギリスの首相といえばボリス・ジョンソンですが、以前はロンドンの市長を務めていました。ちょうどロンドンオリンピックが行われた時期にあたります。市長時代の功績といってもコレといったものはありませんが、評価すべきは「ボリスバス」を導入したことでしょう。

そもそも当時のロンドンバスは有名な二階建ての「ダブルデッカー」の老朽化により、二両編成の新型バスに入れ替えがおこなわれ、ロンドンらしい光景の一つが失われつつありました。さて、当時あらたに導入された二両編成のバスですが、何一つとしていいことはなく、様々な問題を抱えるのみでした。そもそも二両編成のため、狭いロンドンの道には不向きで、当時の大問題でもあったロンドン市内の渋滞を悪化させました。また、高額な人件費からバスの車掌制度をなくしたものの、そこに二両編成を取り入れたものですから、後部車両での「ただ乗り」が横行し、赤字が悪化するという、日本人であれば「えっ?」と思うようなデタラメな事態もおこったのです。

そのような状況下で新たに出てきたバスが新しい「ダブルデッカー」の「ボリスバス」で、見た目もかわいらしいお洒落な装いで、今でもロンドン市民には人気があります。

イギリスの(階級)社会コメディー

前回の投稿からしばらく時間が経ちましたが、今回もイギリスのコメディー番組についてお話ししようと思います。


イギリスは階級社会であると言われているものの、今日の日本人にとっては実感がわきにくいでしょう。イギリスの階級というものは基本的に親から子へと引き継がれる、いわゆる世襲制です。貴族であれば長男が貴族の位を受け継ぎ、職人であれば子供もまた職人となるのです。もちろん、上の階級に上がったり、下の階級に下がったりする(class mobility)のチャンスは平等に与えられていますが、階級間には大きな壁があることは否定できません。その壁を乗り越え、上の階級に昇るためには血がにじむほどの努力が求められます。


世の常として、努力はしたくないけど上昇志向が強い人はたくさんいます。そのような人は外見を着飾りたがるものです。つまり、「体裁をとりつくろう」英語で言えば (keeping up appearances)となります。

ここで紹介するコメディーのタイトルは、その Keeping Up Appearances です。

90年代に放映されていました。主人公の Hyacinth「ハイヤシンス」 (花の「ヒヤシンス」)は労働者階級の生まれですが、中産階級出身で地方公務員の Richard Bucket と結婚し、中産階級に上がることができました。しかしそれでは満足ならず、さらに上の上流階級に憧れるのですが、上流階級に上がることは到底無理なのが現実です。そこで Hyacinth は中産階級の日常の中で、上流階級のように振る舞い、近隣の人々をトラブルに巻き込んでいきます。

最大の被害者は夫である Richard です。ねっからのお人好しである Richard はいつも Hyacinth の言われるがままに行動します。ロールスロイスに乗ってみたいと Hyacinth が言っては、言われるがままにディーラーに連れて行き、許可がないにもかかわらず試乗。結局は盗難とみなされ警察の「御用」となります。また、Hyacinth と Richard の姓は Bucket「バケット」なのですが、その響きが気に入らない Hyacinth は「ブーケ」とフランス語調に発音させ、Richard のみならず、お隣さんや郵便配達員にも強要するのです。


ひと昔に「オバタリアン」という言葉がありましたが、それとも少しちがいます。「上品にふるまおうとする下品さ」とでも言いましょうか、必要以上に自分を飾る(decorate)することにイギリス人は「下品さ」を見出すとともに、行き過ぎたそれに笑いを見出すのです。