ボリスバス(二階建てバス)

2020年現在のイギリスの首相といえばボリス・ジョンソンですが、以前はロンドンの市長を務めていました。ちょうどロンドンオリンピックが行われた時期にあたります。市長時代の功績といってもコレといったものはありませんが、評価すべきは「ボリスバス」を導入したことでしょう。

そもそも当時のロンドンバスは有名な二階建ての「ダブルデッカー」の老朽化により、二両編成の新型バスに入れ替えがおこなわれ、ロンドンらしい光景の一つが失われつつありました。さて、当時あらたに導入された二両編成のバスですが、何一つとしていいことはなく、様々な問題を抱えるのみでした。そもそも二両編成のため、狭いロンドンの道には不向きで、当時の大問題でもあったロンドン市内の渋滞を悪化させました。また、高額な人件費からバスの車掌制度をなくしたものの、そこに二両編成を取り入れたものですから、後部車両での「ただ乗り」が横行し、赤字が悪化するという、日本人であれば「えっ?」と思うようなデタラメな事態もおこったのです。

そのような状況下で新たに出てきたバスが新しい「ダブルデッカー」の「ボリスバス」で、見た目もかわいらしいお洒落な装いで、今でもロンドン市民には人気があります。

イギリスの(階級)社会コメディー

前回の投稿からしばらく時間が経ちましたが、今回もイギリスのコメディー番組についてお話ししようと思います。


イギリスは階級社会であると言われているものの、今日の日本人にとっては実感がわきにくいでしょう。イギリスの階級というものは基本的に親から子へと引き継がれる、いわゆる世襲制です。貴族であれば長男が貴族の位を受け継ぎ、職人であれば子供もまた職人となるのです。もちろん、上の階級に上がったり、下の階級に下がったりする(class mobility)のチャンスは平等に与えられていますが、階級間には大きな壁があることは否定できません。その壁を乗り越え、上の階級に昇るためには血がにじむほどの努力が求められます。


世の常として、努力はしたくないけど上昇志向が強い人はたくさんいます。そのような人は外見を着飾りたがるものです。つまり、「体裁をとりつくろう」英語で言えば (keeping up appearances)となります。

ここで紹介するコメディーのタイトルは、その Keeping Up Appearances です。

90年代に放映されていました。主人公の Hyacinth「ハイヤシンス」 (花の「ヒヤシンス」)は労働者階級の生まれですが、中産階級出身で地方公務員の Richard Bucket と結婚し、中産階級に上がることができました。しかしそれでは満足ならず、さらに上の上流階級に憧れるのですが、上流階級に上がることは到底無理なのが現実です。そこで Hyacinth は中産階級の日常の中で、上流階級のように振る舞い、近隣の人々をトラブルに巻き込んでいきます。

最大の被害者は夫である Richard です。ねっからのお人好しである Richard はいつも Hyacinth の言われるがままに行動します。ロールスロイスに乗ってみたいと Hyacinth が言っては、言われるがままにディーラーに連れて行き、許可がないにもかかわらず試乗。結局は盗難とみなされ警察の「御用」となります。また、Hyacinth と Richard の姓は Bucket「バケット」なのですが、その響きが気に入らない Hyacinth は「ブーケ」とフランス語調に発音させ、Richard のみならず、お隣さんや郵便配達員にも強要するのです。


ひと昔に「オバタリアン」という言葉がありましたが、それとも少しちがいます。「上品にふるまおうとする下品さ」とでも言いましょうか、必要以上に自分を飾る(decorate)することにイギリス人は「下品さ」を見出すとともに、行き過ぎたそれに笑いを見出すのです。