イギリスの(階級)社会コメディー

前回の投稿からしばらく時間が経ちましたが、今回もイギリスのコメディー番組についてお話ししようと思います。


イギリスは階級社会であると言われているものの、今日の日本人にとっては実感がわきにくいでしょう。イギリスの階級というものは基本的に親から子へと引き継がれる、いわゆる世襲制です。貴族であれば長男が貴族の位を受け継ぎ、職人であれば子供もまた職人となるのです。もちろん、上の階級に上がったり、下の階級に下がったりする(class mobility)のチャンスは平等に与えられていますが、階級間には大きな壁があることは否定できません。その壁を乗り越え、上の階級に昇るためには血がにじむほどの努力が求められます。


世の常として、努力はしたくないけど上昇志向が強い人はたくさんいます。そのような人は外見を着飾りたがるものです。つまり、「体裁をとりつくろう」英語で言えば (keeping up appearances)となります。

ここで紹介するコメディーのタイトルは、その Keeping Up Appearances です。

90年代に放映されていました。主人公の Hyacinth「ハイヤシンス」 (花の「ヒヤシンス」)は労働者階級の生まれですが、中産階級出身で地方公務員の Richard Bucket と結婚し、中産階級に上がることができました。しかしそれでは満足ならず、さらに上の上流階級に憧れるのですが、上流階級に上がることは到底無理なのが現実です。そこで Hyacinth は中産階級の日常の中で、上流階級のように振る舞い、近隣の人々をトラブルに巻き込んでいきます。

最大の被害者は夫である Richard です。ねっからのお人好しである Richard はいつも Hyacinth の言われるがままに行動します。ロールスロイスに乗ってみたいと Hyacinth が言っては、言われるがままにディーラーに連れて行き、許可がないにもかかわらず試乗。結局は盗難とみなされ警察の「御用」となります。また、Hyacinth と Richard の姓は Bucket「バケット」なのですが、その響きが気に入らない Hyacinth は「ブーケ」とフランス語調に発音させ、Richard のみならず、お隣さんや郵便配達員にも強要するのです。


ひと昔に「オバタリアン」という言葉がありましたが、それとも少しちがいます。「上品にふるまおうとする下品さ」とでも言いましょうか、必要以上に自分を飾る(decorate)することにイギリス人は「下品さ」を見出すとともに、行き過ぎたそれに笑いを見出すのです。